2009年11月15日

書評3 「群雲、関ヶ原へ」 岳宏一郎著


 年金研究会で遠く遠くの「島田」というところへ「電車」に乗っていってきたので疲れた。
内容も自分で前もって勉強していた分野(前回の老齢給付の繰上げのように)は、わかるが
アットランダムにどこをやるか当日までわからないと言うことでは、発表を聞いてもわからへんで。
まあでも刺激を受けて「年金脳」を少しでも活性化できるならまあよしだ。

 週末書評の3は、「群雲、関ヶ原へ」岳宏太郎。
関ヶ原を題材とした小説は司馬遼太郎の「関ヶ原」をはじめとして複数あるだろうけど、キッドが
評するに、この小説が最高関ヶ原本だ。やはり、石田三成が主役なのだが東西両軍の多くの
武将の短編集から上巻、下巻の大作に仕上げている。特に上杉景勝への思い入れにふかい
ものがあるのか「悪縁」(上巻の2章)「ふたたび足音」(下巻の最終章)の短編は何度も読んで
しまうほどの名文だ。福島正則や細川忠興ガラシャ夫妻の短編もなかなか良いので、この文
庫本は平成10年に購入して何度も読んで(もっと前に購入した文庫本がきれいなカバー付
なのに対して)表紙のカバーが破れて捨ててしまったほどなのだ。

 これほどの(キッドにとっては司馬遼太郎を軽く超えるぐらい)のデビュー作を書く作家である
から、さぞや素晴らしい作品を次々に書いていくだろうと思ったが、後が続かない。群雲3部
作ということで賤ケ岳、大坂と本作を挟んで3篇というのがあるが、「群雲、賤ケ岳」というのは、
"関ヶ原へ”がヒットしたことにより「軍師官兵衛」の改題だそうで"関ヶ原へ”とは比べるべくも
無い。やはり創作というのは、才能によるところが大きく経験をつめば、あるいは精進をすれば
上達しいく世界とは別物なのだろうか。  

Posted by コンサルキッド at 20:19Comments(0)書評

2009年11月08日

書評2 「敗れざる者たち」by沢木耕太郎


 ブラックキッド号の本日走行距離150キロと一番の長距離走だ。遠方まで行って(予想外の)長時間勉強でちょっと疲れたで。

 書評の2弾はノンフィクションライターとして本名が未だにわからない「沢木耕太郎」29歳のときの文庫本「敗れざる者たち」昭和56年キッド19歳のときの冬に購入の本だ。沢木が「5年前、大学を出たばかりで、自分に何が可能さえわからないままにジャーナリズムのリングに上ってしまった4回戦ボーイ」の頃の作品とのことだ。

 6篇の作品からなる文庫本だが最初の1篇「クレイになれなかった男」の主人公のボクサーに言ってる台詞は、作家が小説の主人公を見て言っているのではなくあくまでも沢木自身がボクサーであり、一人称で言っているので教訓めいた(後年の著作と違って)しびれるのだ。

 ”しかし、もっと正確に言わねばならぬ。人間は燃え尽きる人間と、そうでない人間と、いつかは 燃え尽きたいと望み続ける人間の三つのタイプがあるのだ、"とか。

 5篇目の「さらば宝石」は、ロッテの前のプロ野球球団毎日オリオンズのEという選手(大毎ミサイル打線の榎本喜八)を追った作品で、どちらかというとコンサルタントや職人でキッドのように「あまり世間は気にしないが自分的にはかなり真面目」という人には、面白いかもしれない。  

Posted by コンサルキッド at 20:35Comments(0)書評

2009年11月01日

書評1 武田勝頼by新田次郎



 新田次郎の作品では大河ドラマで最高視聴率を記録した「武田信玄」が有名だが、キッドは、
断然この続編とも言える「武田勝頼」の方を推奨したい。

 石田三成が清廉で女性にもてる正義漢として描かれるのとは違って武田勝頼の場合は、司馬遼太郎作品のように、
しばしば猪突猛進思慮分別の浅い武将として描かれる。

 この新田次郎作品では、武田勝頼は、このままでは武田がやっていけないことがわかっていた勇敢だが思慮も分別もある武将として登場している。
しかしご親類衆(穴山信君)、先代の幻という内部環境における弱み、
厳しい外部環境(織田信長)という脅威が圧倒的で、
武田騎馬軍団つよみと上杉との同盟機会
を完全に上回っていたため

有能な青年社長(武田勝頼)と老舗企業が巨大新興企業(織田信長)と組織の旧弊(ご親類衆)に本来の力を発揮できず
につぶされていく悲劇が描かれ映画化すれば「影武者」なんかより(テーマはおなじで)よいものができるのではないだろうか。

陽(一)水(二)空(三)前編に準主役で登場している青年時代の真田昌幸は専門職(武将)としての能力と大局的な大名政治家として
の能力を兼ね備える人物として常にすばらしい着想・意見を述べていて(しかしほとんどは旧勢力により採用されない)かなり渋い。  

Posted by コンサルキッド at 19:31Comments(0)書評